8匹の猫が社員を癒してくれる出版社。東京・足立区にある「しまや出版」の日常を鮮明に映し出したフォトエッセイ
東京・足立区には猫愛に満ちた、温かい印刷会社がある。それが、「しまや出版」だ。しまや出版には人間の社員以外に、猫社員(社猫)が在籍。社猫たちは「癒し課」に所属し、会社のために頑張る社員をマイペースに癒している。
『ようこそ!しまや出版癒し課へ』(しまや出版:写真、にごたろ:漫画/KADOKAWA)では、そんなしまや出版の日常や社猫たちの勤務姿、癒し課設立の経緯が知れる。
本作には「拾い猫のモチャ」シリーズでおなじみのにごたろさんが描いた、再現率の高いイラスト&猫漫画も収録。見どころ満点なフォトエッセイとなっている。
『ようこそ!しまや出版癒し課へ』(しまや出版:写真、にごたろ:漫画/KADOKAWA)
しまや出版で働く社猫たちは、ほとんどが保護猫。事の始まりは、しまや出版の向かいにあった、人が住んでいないあばら屋に野良猫が住み始めたことだった。
外猫は、人間を警戒する子が多い。だが、野良猫のうち、2匹のキジトラはしまや出版へ遊びに来るように。社員たちは昼休みに猫たちと遊ぶようになり、2匹を「とら」「タンタン」と呼び始めた。
せめて、この子たちだけでも安全な場所で暮らしてほしい…。そう思った小早川社長や社員らは少しずつ距離を縮め、事務所に出入りするようになった段階で2匹を保護。2010年、とらちゃんとタンタンちゃんは“社猫”として採用され、しまや出版には2匹が所属する「癒し課」が新設された。
入社した時点で高齢だったとらちゃんは、ほどなくして他界。その後は、タンタンちゃんがひとりで癒し課を切り盛りするようになっていった。
そんな時に出会ったのが、現在しまや出版の“顔”となっているユキちゃん。ユキちゃんは子猫の頃、とある動物病院に持ち込まれた子。「猫を飼いませんか?」と連絡を受けたことから、しまや出版に迎え入れられた。
ユキちゃんはタンタンちゃんが亡くなった後、主任に昇格。ツンデレならぬ、ツンツンツンデレな性格を活かし、社員を虜にした。
ユキちゃんを迎えた後も、しまや出版には“新入社猫“が続々と入社。2023年現在では、8匹の猫が「癒し課」に所属しているという。
社猫たちの中には、小早川社長宅でリモートワークをする子も。
本作では社猫たちのかわいらしい特徴や個性が写真付きで詳しく紹介されており、自然と頬がゆるむ。また、単なる看板猫として扱うのではなく、1匹1匹としっかり心の交流をし、愛でている小早川社長や社員たちの猫愛が伝わってきて、温かい気持ちになる。
実は小早川社長、もともとは幼少期に保護犬と暮らすなどしていた犬派だったそう。ところが、癒し課の設立や社猫たちとの出会いを経て、猫という動物の素晴らしさを知り、猫も好きになったという。
現在、社長宅はリモートワーク部署となっており、社猫見習いの子が過ごす新猫研修センターでもあるのだそう。時には、正式な譲渡先(就職先)が決まるまでの子猫がインターンシップにやってくることもあるという。
柔軟な働き方を採用し、ストレスがかからないように配慮しているからこそ、8匹の猫たちは伸び伸びとした社猫ライフを満喫。社員みんなで4~5年かけて猫仕様にDIYした「癒し課」の室内で、ノートパソコンの上に乗ったり、膝の上でへそ天をしたりと、個性が光る癒し方で人の心をほぐしている。
本作には、ずっと一緒にいる社員だからこそ撮影できた奇跡のベストショットも多数掲載。そこに映し出された猫の愛くるしさや社員たちの猫愛を感じとってほしい。
人と猫は、もっと互いを癒し合い、寄り添い合うことができる。本作に描かれている人と猫の絆に触れると、そう強く感じ、猫という動物がより一層、愛しく思えるはずだ。
文=古川諭香
記事提供=ダ・ヴィンチWeb
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