アニメ映画『夏へのトンネル、さよならの出口』で鈴鹿央士が声優に初挑戦!「この世界に行ってみたい!と思いました」
2019年に第13回小学館ライトノベル大賞のガガガ賞と審査員特別賞をW受賞した注目のライトノベル作家・八目迷が、受賞作を改題・改稿した同名小説をアニメ化した『夏へのトンネル、さよならの出口』が、2022年9月9日(金)より全国ロードショー。それぞれに事情を抱える高校生の男女・塔野カオルと花城あんずが、「何でも願いをかなえてくれる」という不思議なトンネルの調査をするうちに心を通わせていく。ひと夏の切ないエピソードを紡ぐ本作で、カオル役で声優に初挑戦した鈴鹿央士に作品への思いを聞いた。
(c)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会
――まずは、この作品への声の出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。
「オーディションに受かったことに驚きました。事務所で3年ほど前に、テストで声の演技を録音したら、当時はあまりにもできなくてオーディションに送ることすらできなかったんです。それがトラウマだったので、まさか受かるとは思っていませんでした。この作品は原作がすごくすてきで、これがアニメーションになったらどんな色が付いて、どう動くのか……など、どのような世界観になっていくのかが楽しみな作品だったので、携われることになって本当にうれしかったです。アニメーションは、日本人の生活に根付いた世界に誇れるカルチャーでもありますし、幸せなことだなと思いました」
――心に影がある塔野カオルというキャラクターを演じる上で意識したことは?
「カオルは父との関係もあり、過去の出来事による心の傷があって、他人との関係においてもどこか冷めている部分がある人物です。普段の僕も割とローテンションな人間ですが、僕がそうなのは特に何か意味があるわけではないので。彼がローテンションの裏に隠し持っている過去のトラウマを表現できればいいなと思いながら演じました」
――生身の演技と声の演技との違いは感じましたか?
「単に声の出し方や声色を変えればいいというわけではなく、心が動いていないと聴いてくれる人には届かないなと実感しました。実写のドラマや映画には生身の人間として出られるのでいろいろな表現方法がありますし、声だけだと『何か乗せなきゃいけないのかな?』と思ってしまいそうになりますが、今回は普段お芝居をしている感覚でやっていました。(花城あんず役の)飯豊(まりえ)さんと一緒にアフレコをしたのですが、台本の順にとっていったので、リアルな掛け合いになっているんじゃないかと思います。監督も『そのリアルな感じがいいね』とおっしゃってくださいました」
――ご自身では、飯豊さんとのコンビネーションはどう感じましたか?
「飯豊さんの声はすごく聞きやすくて、スーッと真っすぐ届くなと、隣で聞いていて思いました。僕が悩んでいたら、飯豊さんが『こうしてみたら?』とアドバイスもしてくださって、助けていただきました」
――最初の方は、カオルもあんずもとてもローテンションですが、互いに意識し合うと、少し声が弾んできて。そういった変化は自然に生まれたのでしょうか?
「おそらくそうだと思います。飯豊さんとは『初めまして』とあいさつするところから始まったのですが、2人でずっと同じ空間にいたので、合間に世間話をしながら、台本の“シーン1”から順にとっていったんです。現実でもぎこちなかったところから徐々に普通に話せるようになっていったので、物語の中と実際の関係性がリンクしていった感覚はあります。順番にとっていったのは、やりやすかったです」
――出来上がった映像をご覧になった感想は?
「きれいでした。『この世界に行きたい』と思いました。こういう夏、いいなぁと。自分の人生に問題を抱えている2人が、自分らしい人生や行きたい道を見つけて進んでいく姿を描いているので、見終わった時に僕自身も『後悔しないように生きよう』と前向きな気持ちになれました。また、響いてくるメッセージがありました。音楽も良かったです!曲の歌詞がその時のキャラクターの心情に寄り添ってくれていましたし、場面ごとに合わせた音楽が流れるので、そこにも感動しました」
――ご自身には、カオルのような忘れられない夏の思い出はありますか?
「高校時代の夏休みです。部活が午前中で終わった日は、近くのラーメン屋さんでみんなでお昼ご飯を食べて、その後に公園に行って水風船で遊んだことです。みんな水風船が好きだったので、近所のスーパーで仕入れたりして誰かしらが持っていたんです。部室で着替えている時に水風船が飛んでくることもありました(笑)。楽しかったです」
――それでは最後に、鈴鹿さんのお部屋のこだわりを教えてください。
「クローゼットは広めがいいです。物をため込んでしまう癖があって、中学時代に使っていたタオルがまだあったりします(笑)。最近はきちんと整理整頓をして、断捨離を心掛けているので収納は大事だなと思います。あとは木目調の色合いがいい部屋にも憧れますね。もし引っ越すなら日当たりや風通しが良くて、扉などに木が使われている部屋がいいです。今住んでいる部屋もそうですが、ナチュラルテイストが個人的には好みで、グリーンも置きたいですね。実家のリビングには母が趣味で育てていた、僕の背丈より大きなグリーンもあったんです。家具も木目調のものに囲まれて育ったので、その方が落ち着く気がします」
取材・文=本嶋るりこ 撮影=永田正雄 ヘアメイク=阿部孝介 スタイリスト=朝倉豊
インフォメーション
『夏へのトンネル、さよならの出口』
2022年9月9日(金)より全国ロードショー
とある片田舎。過去の出来事で心に傷を負った高校生・塔野カオルは、雨降る駅でどこか謎めいた少女・花城あんずに傘を貸す。それからしばらくしてカオルのクラスにあんずが転校してくる。再会した2人は、「欲しい物がなんでも手に入る」という不思議な言い伝えがある“ウラシマトンネル”の存在を知り、その調査を開始。協力し合ううちに、二人は次第に、心の距離を縮めていく。
鈴鹿央士
すずかおうじ●2000年1月11日生まれ、岡山県出身。「MEN'S NON-NO」モデル。映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』(2016年公開)にエキストラで参加したことをきっかけに芸能界にスカウトされる。映画デビュー作『蜜蜂と遠雷』(2019年公開)では各映画賞の新人賞を総ナメに。その他、主な出演作にNHK連続テレビ小説「なつぞら」、TBS日曜劇場「ドラゴン桜」など。現在、テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」に出演中。公開待機作に『バイオレンスアクション』(8月19日公開)がある。