「世界卓球」4年ぶりの団体戦!エースの伊藤美誠・張本智和に迫る新星も加わり、「新時代のNIPPON」がいざ頂点へ
目次
・試合順には駆け引きも!団体戦の面白さが分かる“世界卓球のキホン”
・女子は“みまひな”二枚看板が柱、さらに若い世代の勢いにも期待
・男子はエース・張本智和と、“超攻撃型”戸上隼輔が主軸
卓球界で最も権威のある大会「世界卓球」が、2022年9月30日(金)に中国・成都で開幕する。同大会は奇数年に個人戦、偶数年に団体戦が行われ、今年は団体戦。団体戦の開催は、2020年大会がコロナ禍で中止となったため、実に4年ぶりとなる。
卓球の歴史をひもとけば、1950~60年代に男女各種目で数多く優勝していたのは日本だった。その後の中国の強さは周知の通りだが、日本は覇権を取り戻すべく長期的な育成計画に取り組み、次々と才能豊かな選手が誕生。ついに昨年の東京五輪では混合ダブルスで金メダルを獲得し、打倒中国へあと少しのところまで迫っている。
パリ五輪まであと2年、代表選考期間でいえばもう1年半もない中で、今回の「世界卓球」は現代表の実力を測る重要な試金石となる。新世代の勢いも感じられる代表陣の顔触れなど、テレビ観戦を楽しむための基本情報を押さえておこう。
試合順には駆け引きも!団体戦の面白さが分かる“世界卓球のキホン”
今大会には男女各40チームが参加予定。5チームずつに分かれて8グループでリーグ戦を行い、各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進む。
「世界卓球」の団体戦はオリンピックなどと異なり、ダブルスはなく全てシングルスで行われる。一つの対戦を代表5人のうち3人で行い、全5試合中先に3勝したチームの勝ちとなる。試合は11点制、5ゲームマッチの3ゲーム先取。試合順のオーダーは以下のパターンによる「ABC-XYZ方式」で決めるが、ここに駆け引きが生じることも。
第1試合:A選手×X選手
第2試合:B選手×Y選手
第3試合:C選手×Z選手
第4試合:A選手×Y選手
第5試合:B選手×X選手
まず、コイントスでどちらのチームがABC側かXYZ側かを決め、それぞれABCまたはXYZに選手を当てはめる。3人のうち2人(A・BまたはX・Y)が2試合行う。第1試合にエースを起用し勝利で勢いづけたいところだが、Xは2戦目が第5試合となるため、その前に決着がつけば出番がなくなる。“流れ”が重要な団体戦において、どちらがABC側を取りエースをどこで出すのかという、試合前にも一つの見どころがある。
日本代表のメンバーは、男子は張本智和を筆頭に、戸上隼輔、及川瑞基、横谷晟、丹羽孝希の5人。女子は伊藤美誠、早田ひな、長崎美柚、木原美悠、佐藤瞳で臨む。エースの活躍はもちろん、新星のブレークにも期待したい。
東京五輪金メダリストの伊藤(左)と、アジア3冠の早田(右)
女子代表は世界5位(9月13日時点、以降同様)の伊藤と同6位・早田の“黄金世代”2人が柱に。伊藤は相手に的を絞らせない多彩なサーブレシーブと強烈なスマッシュで、強豪たちを撃破してきた。去年の東京五輪では、混合ダブルス、女子シングルス、女子団体で3つのメダルを獲得。さらに、前回の「世界卓球2018団体戦」決勝では、中国を破り大会MVPを獲得するなど、団体戦では無類の強さを誇る。豊富な経験値と大舞台でも「全く緊張しない」という強心臓、そして、相手を揺さぶる変幻自在なプレーでチームをけん引する。
一方、小柄で前陣主体の伊藤とは対照的に、長身の早田は長い手足を生かし、台から離れていてもパワードライブが打てるサウスポー。東京五輪では控えに回ったが、以後活躍が続いており、昨年の「アジア選手権」ではシングルス・団体・混合ダブルスの3冠を達成。今年に入ってもパリ五輪代表選考大会で2連勝するなど、勢いのままに成都へ乗り込む。
また、「Wみゆう」こと20歳の長崎美柚と18歳の木原美悠も成長株。過去にダブルスで世界最強の中国ペア、孫穎莎・王曼イクから金星を挙げ、ダブルスの年間女王に輝いたことも。そして、日本人で唯一五輪金メダリストに連勝したことがあるカットマンの佐藤は、日本のオーダーの幅を広げる貴重なカードとなる。
長崎(左)と木原(中)は初の世界卓球代表。佐藤(右)は最長ラリーの記録を作ったカットの名手
日本代表をリードする張本(左)と、その重責を自らも担おうと活躍を誓う戸上(右)
男子代表は世界4位の張本と、成長著しい全日本王者・戸上が軸となる見込み。2017年に最年少の13歳6カ月で「世界卓球」に初出場した張本も、今や19歳。近年はスランプに苦しんでいたが、今年に入り、2つのパリ五輪代表選考大会で連続優勝。7月の国際大会の決勝では、中国の林高遠を0-3から逆転する劇的な優勝を遂げた。自ら「生まれ変わった」と復活を宣言したエースの進化に期待が高まる。
戸上はフルスイングで攻めまくる“超攻撃型” 卓球が魅力の21歳。鋭い両ハンドのドライブを武器に、1月の「全日本選手権」でシングルス、ダブルスの2冠を達成した。「これからは自分が日本代表を引っ張る」と宣言するなど、覚悟は十分。秋からドイツ・ブンデスリーガ1部に参戦する若武者は、この大舞台でどんな戦いを見せてくれるのか。
ほか、東京五輪にも出場した代表経験豊富な丹羽、昨季TリーグのMVPで前全日本王者の及川、シニア初代表となる20歳の新星・横谷が控えている。有力者がそろった男女代表の躍動を見届けよう。
青森山田高校の先輩後輩でもある丹羽(左)と及川(中)。横谷(右)はあの水谷隼が期待する新星だ
※長崎美柚の崎は「たつさき」。王曼イクのイクは「日」に「立」
取材・文=井上潤哉
放送情報
世界卓球2022成都
放送日時:2022年9月30日(金)よる7時30分~ 連日放送
チャンネル:テレビ東京系