確定申告って何を申告しているの?控除ってどんなものが受けられるの?学校では教えてくれなかった税金のこと
“大人だったら知っていて当然”といわれる知識が社会にはたくさん存在します。
この連載では、「子どもの環境・経済教育研究室代表、元公立鳥取環境大学経営学部准教授」の泉美智子さんが「学校では教えてくれなかった 社会で生きていくために知っておきたい知識」をご紹介。労働のこと、お金のこと、結婚・子育てのこと、介護のこと、住まいのことなど、身近な役立つ知識を図解とともに紹介します。
今回は、確定申告や控除などの税金について。確定申告って何を申告しているのか、控除はどんなものがあるのか、事前に知っておきましょう。
ANSWER:1年間の収支や控除をまとめて申請し納税額を確定する
確定申告では年間の所得を申告し、納税額を確定します。会社員の場合は会社が代わりに所得税を納めてくれますが、自分で納税する必要がある個人事業主は必ず確定申告が必要になります。
また、会社員であっても、副収入が20万を超える場合や、年末調整で対象となっていない控除を申請する場合は、申告期限までに申告をする必要があります。
確定申告の対象となるのは、1月1日から12月31日の所得です。その期間中は受け取った給与などの所得やかかった経費などを帳簿に記録しておきます。実際に確定申告書類を提出するのは翌年の2月16日~3月15日の間です。所得税を支払う場合には同じく3月15日までに納税します。確定申告が遅れた場合には、「無申告加算税」、納税が遅れた場合には「延滞税」がペナルティーとして課されるので注意しましょう。
個人事業主の場合、確定申告の方法は「青色申告」と「白色申告」の2種類あります。白色のほうが手間も少なくすみますが、青色であれば最大65万円の特別控除がもらえ、節税効果があります。青色は、不動産所得があれば会社員でも可能です。手間があるものの収入が多い人は申告しておくのがよいでしょう。
≪POINT≫
■確定申告で納税額を確定している
≪POINT≫
■確定申告のスケジュール
1月1日~12月31日 課税対象期間
課税対象となるのは1月1日からの1年間。期間中は所得や経費を自分で集計する
翌年2月16日~3月15日 確定申告期間
終始や控除を計算して、書類を作成する。所得税を源泉徴収されていない場合はこの期間中に支払う
3月~5月 還付期間
税金の払いすぎがあった場合は、この期間中に税務署から還付される
≪POINT≫
■確定申告はどんな人がする?
しないといけない人
・個人事業主
・20万を超える副収入がある
・給与が2,000万を超える
・複数からの給与所得がある
・不動産を売った
・年金受給者
すると得する人
・10万を超える医療費を支払った
・マイホームの住宅ローンを組んだ
・退職して再就職していない
・寄付やふるさと納税をした
≪POINT≫
■個人事業主の確定方法は2種類
青色申告
メリット
・複式簿記で最大65万の特別控除、単式簿記でも最大10万円の控除がある
デメリット
・帳簿を記入し、収支を管理することが必要
・事前に「青色申告の承認申請書」の提出が必要
提出する書類
・確定申告書A(給与所得者の場合。個人事業主はB)
・青色申告決算書
・控除証明書
白色申告
メリット
・青色申告とくらべて申告が簡単で、事前の届け出も不要
デメリット
・青色申告とくらべて控除が受けられない
・申告額の間違いを指摘された場合に、異論申し立てができない
提出する書類
・確定申告書A(給与所得者の場合。個人事業主はB)
・収支内訳書
・控除証明書
ANSWER:たくさんの種類があり、なかには確定申告が必要なものも
控除とは、「差し引くこと」。税金や所得に控除が適用されると、課税対象額・税金、課税対象となる所得金額自体を減らしたりすることができます。
控除には、申請しなくてもよいもの、年末調整が必要なもの、確定申告が必要なもの(下記★マーク)があります。自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
≪POINT≫
■主な控除の例
給与所得控除
●会社員のみなし経費
自営業者や個人事業主の場合、売上から必要経費を差し引いた額が課税対象となる。給与所得控除は、会社員の必要経費(カバンや靴など)を考慮した控除。
基礎控除
●誰にでも適用される
会社員・個人事業主を問わず適用される控除。課税所得が2,400万円以下であれば48万円が控除され、課税所得が増えるにつれ段階的に控除額が減っていく。
配偶者控除
●収入によって変わる
所得額などの条件を満たした配偶者がいる人が受けられる控除。配偶者の給与所得が103万円以下などの条件がある。
扶養控除
●扶養家族の人数分控除
納税者によって生計を維持している、給与所得が103万円以下(それ以外の所得は48万円以下)の親族一人につき、38~63万円までの控除を受けられる。配偶者は対象外。
■注目の控除
住宅ローン減税(★)
正式名称は住宅借入金等特別控除。10年以上の住宅ローンを組んだ人が対象で、課税所得を減らすほかの控除とは違い、控除額がそのまま所得税額から減額(減税)される。控除額が所得税額を上回った場合は、来年度の住民税から残りの金額が差し引かれる。
医療費控除(★)
課税対象期間である1年間に支払った医療費が10万円を超えると対象になる(保険金などを受け取ってる場合は、保険金を差し引いた額が10万円超)。治療のための処方箋や病院の交通費も金額に含まれる。
寄付金控除(★)
1年間の寄付金額に応じて、所得控除を受けることができる。また、「ふるさと納税」も寄付金控除の対象であり、ふるさと納税は所得税の控除に加えて、住民税も控除される。ふるさと納品には所得などに応じた上限額があるので注意。
★=確定申告が必要なもの
ふるさと納税のワンストップ特例
確定申告をしなくても控除が受けられるのがワンストップ特例制度。1年間の寄付先が5自治体以内であり、提出期限までに申請書を送付すれば、手軽に住民税からの控除が受けられる。
■その他の控除
障害者控除
家族に障害者がいる、もしくは本人に障害があると27万円(特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)を控除する
寡婦(寡夫)控除
配偶者に先立たれ、もしくは離婚した場合、所得などの条件を満たせば27万円または35万円の控除
ひとり親控除
所得の条件を満たした、母子家庭または父子家庭の父母が対象
勤労学生控除
所得が75万円以下の働いている学生は27万円を控除できる
雑損控除(★)
災害で損害を受け、保険がおりてもなお損失があるとき、一定額を控除できる
★確定申告が必要
社会保険控除
健康保険料や年金保険料など、社会保険料は全額を控除できる
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済やiDeCoの掛金の全額を控除できる
生命保険料控除
生命保険料や介護医療保険、個人年金保険についてそれぞれ4~5万円、合計12万円まで控除できる
地震保険料控除
地震保険に加入している場合最高5万円を控除できる
個人事業主に限らず、会社員も確定申告が必要な場合があります。控除には申請しなくてもいもの、確定申告が必要なものなど、種類があるのでしっかり覚えておきましょう。
泉美智子
子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)
全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など講演活動の傍らテレビ、ラジオ出演も。環境、経済絵本、児童書の執筆多数。『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞社)、『学校では教えてくれなかった 社会で生きていくために知っておきたい知識』(KADOKAWA)などを監修。
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