油断大敵! 凍結した路面で転倒しないために歩行や運転で気を付けたいこと
積雪や路面凍結による転倒事故が発生しやすいシーズンが到来。雪で足を滑らせたり、凍ったわだちにつまずいたり、運転中にハンドルを取られたり…と、ヒヤッとする場面がいくつも思い付く。打ちどころが悪ければ命に関わる事態も起こり得るのが転倒事故の怖さ。
一般社団法人「福祉防災コミュニティ協会」福祉防災上級コーチの高橋洋さんは、「路面が凍結している時は外出を控えるのが何よりの防災です」と訴える。どうしても出かけなくてはならない時は、転倒しないための心構えや転倒しにくい装備を施したり所作を心がけることが肝心とのこと。自動車やバイク・自転車を運転する時、歩く時とシチュエーション別に注意点を教えてもらった。
転倒リスクを遠ざけるには、どんな場所が滑りやすいかを心得ておくことが大事。通勤・通学で使っている道に次のような場所があるなら、積雪や路面凍結による転倒が発生しやすいので注意しよう。
<車の通過が多い歩道>
タイヤで雪が踏み固められた場所は、夜間に気温がグッと下がると凍ってツルツルになり、スケートリンクのような状態に。また、わだちが残ったまま凍ってしまうと道にデコボコができるので、非常につまずきやすくなる。
<人の出入りが多いところ>
バス乗り場、地下街や地下鉄の出入り口など、人の足で雪が踏み固められやすい場所も要注意。カチカチに凍結している夜や朝方はもとより、気温が上がる日中は氷の表面が溶けてさらに滑りやすくなる場合も。
<横断歩道の白線>
横断歩道や路面表示などに使われている塗料(トラフィックペイント)は水が染み込まないため、気温が低いと雨や雪が凍って表面に氷の膜ができやすくなり滑りやすい。
雪道や凍結した路面を歩く時は、焦らず、急がず、ゆっくり落ち着いて行動することを心がけよう。また、転倒してしまった時の衝撃を少しでも軽減できる服装で出かけることも忘れずに。
<注意点>
・両手に荷物を持たない(転倒した時に両手を着いて身を守れるようにしておく)
・小さな歩幅でゆっくり慎重に歩く(片足に体重を乗せ過ぎないことが大事)
・靴の裏全体で上から下へ垂直に踏みしめる(かかとから着地するのはNG)
・転倒しそうになったら転がるようにして体を丸める(頭や腰などを打たないようにする)
<おすすめの服装>
・靴は底に深い溝があるもの、固い氷や雪を捉えやすいピンや金具付きのものを履く。着脱可能な靴用のアタッチメントを活用するのもOK
・転倒した時に頭や腰を守れるように、フード付きやお尻が隠れる長さのコートを着る
・厚めのニット帽やクッション材が付いた保護帽子をかぶる
・転倒して手を着いた時のケガ防止に手袋をはめる
・かばんはリュックタイプを選び、両手を自由にしておく
やむを得ず凍結した路面を自転車やバイクで走る!?そんな時は…
二輪車はちょっとしたことでバランスを崩しやすく、転倒するリスクが非常に高いため、路面が凍結している時に自転車やバイクで出かけるのは原則NG。自分が転倒するだけならまだしも、他者を巻き込んでしまう可能性も少なくない。それでも、生活の足としてどうしても乗らなくてはならない場合は、しっかり装備した上でスピードを落とし、無理な走行をしないことを心がけよう。
<注意点と対策>
・ヘルメットを必ず着用する(努力義務とされている自転車の場合も必ず着用を!)
・バイクはスタッドレスタイヤやタイヤチェーン、自転車は滑り止めケーブルタイを装着する
・スピードは出さず、ゆっくり慎重に走行する(転倒した時のダメージを軽減するため)
・前輪をロックしてしまう右ブレーキは使わない(もちろん急ブレーキもNG!)
・マンホールの上は特に滑りやすいので要注意(交差点や曲がり角の入り口に多い)
・凍ったわだちに要注意(乗り上げるとハンドルを取られて転倒しやすい)
普段あまり雪が降らない地域では、たまの大雪や路面凍結によるスリップ事故、立ち往生が多発しがち。自分がどんなに安全運転していても、他の車が滑ってオーバーランしてきたり、歩行者や二輪車が転倒してきたりと危険因子は多い。そのため雪道を走り慣れていない人は、無理に運転しないのがベスト。やむを得ない場合は慎重な運転を心がけて。
<注意点と対策>
・スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを必ず装着する
・時速20km程度までの速度でノロノロと慎重に運転する
・急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルは厳禁
・なるべくエンジンブレーキを使うようにして、できるだけブレーキを踏まない
・車間距離をしっかり取る(前後の車両がスリップした際のダメージを軽減できる)
・坂道(特に下り坂)は滑りやすいので要注意
・橋や高架の出入り口ではスピードを落とす(風が当たって冷え込みやすい橋や高架は路面が凍結しやすい)
「路面凍結による転倒事故を防ぐには“事前の備え”と“慎重な判断”が大切です」(高橋さん)
出かける前は天気予報をしっかりチェックし、無理のない交通手段を選び、事故なく帰宅できるよう行動しよう!
取材・文=野中かおり
教えてくれたのは
高橋洋(たかはしひろし)
1953年生まれ、新潟県出身。練馬区職員として図書館、文化財、建築、防災、都市整備などに従事。1997年より防災課係長を務め、地域防災計画、大規模訓練、協定などに携わる。一般社団法人『福祉防災コミュニティ協会』副理事長、『防災都市計画研究所』シニアコンサルタント、認定特定非営利活動法人『災害福祉広域支援ネットワーク・サンダーバード』副代表。著書に『防災 実務のガイド』(日本防災出版社)など。防災関連パンフレット類監修多数。