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圧力鍋って結局どうなの? プロが徹底解説する「圧力鍋のメリット&デメリット」

目次

煮物やカレー、シチューなどの煮込み料理を作る時、あっという間に素材をやわらかく煮込むことができる圧力鍋。「ruum」のショッピングでも、電気圧力鍋がとても人気だ。しかし、便利そうな一面、使い方や安全性に不安があって「ちょっとハードルが高い」と感じている人も多いかもしれない。

そこで、圧力鍋はどう使えば便利か、そして使う時に注意すべきところはどこかを、圧力鍋研究家さいとうあきこさんが伝授! 元圧力鍋メーカーの会社で企画を担当し、その機能や仕組みを知り抜いたプロが教える、圧力鍋のメリットとデメリットとは? 電気圧力鍋と通常の圧力鍋の違いも併せてお教えします!

【メリット】圧倒的に調理時間が短縮できる!

「電気圧力鍋と通常の圧力鍋、共通する最大のメリットといえば、やっぱり時短です」とさいとうさん。

「火の通りにくい根菜類や豆類、塊の肉などの調理には、普通の鍋だと30分~2時間ほどの加熱が必要です。ところが、圧力鍋なら30分もあれば大丈夫。ジャガイモやサツマイモなども、数分の加圧時間があればおいしくゆでられますよ。普通の鍋ではやわらかく煮るのが難しいゴボウも、形崩れせずにやわらかく仕上がります」

しかも、圧力鍋を使うことで「食感も柔らかくなる」とさいとうさんは説明する。

「普通のお鍋で1時間半かけて煮込んだものより、圧力鍋を使ったものの方がやわらかく仕上がります。その食感は、普通の鍋では再現できません。魚の骨まで短時間でやわらかくできるんですよ」

そもそも圧力鍋は、なぜこんなに短時間で素材に火が通るのか?

「それは圧力が高くなると沸点が高くなるからです。この現象を利用したのが圧力鍋。通常の気圧で普通の鍋を使ったら水の沸点は100度ですが、密閉して加熱することで圧力がかかった鍋=圧力鍋の中だと105〜128度まで水の沸点が上がります。そうすると、その分だけ早く食材に火が通るというわけなんです」

【メリット】ほったらかすだけでOK!

電気圧力鍋の場合、スイッチを入れたらほったらかすだけでOK。「ほったらかしておくだけで調理が完成するなんて、時間が追われる現代人にとってはうれしいですよね。さらに電気圧力鍋は火加減の調整も不要。料理初心者や料理が苦手な方にはピッタリです」さらに、電気圧力鍋は内蔵レシピも豊富なことが多い。「あらかじめ設定されたオートメニューを使用する場合は、自分で加圧時間を設定しなくていい点も便利です」

一方、通常の圧力鍋の場合も、加熱して加圧した後は安全にふたが開けられるようになるまでしばらく時間がかかる。このふたを開けるまでの時間も、さいとうさんいわく「ボーナスタイム」!

「通常の圧力鍋の場合は、火を止めた後、圧力が下がるまで待つ必要があります。この時間で汚れた包丁やまな板を洗ったり、別の調理に取り掛かったり、有効に時間を使えます」

【メリット】野菜が甘くなり、栄養分もそのまま

こちらも電気圧力鍋と通常の圧力鍋、共通のメリット。「野菜の味や食感は、違う温度で調理すると変わることはご存じですか? 圧力鍋で調理したニンジンは普通の鍋で調理するより甘く感じます。ニンジンが嫌いだった子供が、圧力鍋で調理するようになったら食べられるようになったという話もあるんですよ」

さいとうさんいわく、「野菜によって食感や味の変化の仕方は違う」とのこと。

「ジャガイモは、よりしっとりしてねっとりした食感になります。タマネギはトロトロになるまで溶けるので、野菜のコクが染み込んだスープになります」

ちなみに圧力鍋を使うことで栄養素に変化はない?

「栄養素は、通常の鍋を使う時とほとんど変わらないとされています。圧力鍋は水蒸気で火を通すので、たっぷりのお湯でゆでるのに比べて短時間で、また少ない水で調理できるんです。そのため、栄養素の損失も最小限ですみます。電気圧力鍋なら、スイッチ一つで調理できるので、時間のある時にジャガイモやサツマイモ、ニンジンなどをあらかじめゆでておくとさっと調理に使えて便利です」

【メリット】炊飯も可能

「圧力鍋は炊飯器としても使えるんですよ」とさいとうさん。

「お米2合だと15~20分で炊き上がります。炊飯器よりもお米がツヤツヤに、甘みのある味わいに炊き上がりますよ」

ぜひ、圧力鍋を使った炊き方を知りたい!

「お米を洗う手順と水加減はいつもと同じでOK。電気圧力鍋の場合はスイッチを入れて待つだけです。通常の圧力鍋の場合はしばらく水に浸してから火にかけて、1~5分加圧します。あとは圧力が下がってふたが開けられるようになるまで10分程度待つだけ。蒸らす時間は必要なく、お米をほぐして水蒸気を飛ばしたらすぐ食べられます。ちなみに玄米を炊く場合は、圧力の高い圧力鍋がおすすめ。硬い殻が高温で加熱されることで破れるので、炊飯器よりもっちりみずみずしく炊き上がり、消化もされやすくなるんですよ」

ちなみに通常の圧力鍋なら、災害時にも活躍。カセットコンロでも使用できるので、電気が止まってしまっても炊飯器の代わりに使うことも可能だ。「いざという時のために、通常の圧力鍋を1台持っておくのもおすすめです」

【メリット】まだまだある! 圧力鍋のメリット

電気圧力鍋&圧力鍋、共通するメリットはまだまだたくさん。

「素材を大きく切っても短い時間で火が通るので、下ごしらえが楽になるという利点もあります。時短だけでなく、より効率的に調理ができるのも圧力鍋の利点なんですよ」とさいとうさん。

暑さでキッチンが不快になりやすい夏場の調理も、圧力鍋なら快適だ。

「電気圧力鍋は火を使わないのでもちろん暑くなりません。通常の圧力鍋も、密閉されているので、鍋から出る水蒸気の量が普通の鍋より圧倒的に少ないんです。しっかり圧が抜けてからふたを開ければ、ほとんど蒸気を出さずに調理ができるので、その分も熱がこもりにくくなります。もちろん加熱時間が短いのも快適な理由です」

においが出にくいのもメリットの一つ。

「密閉した状態で調理するので、鍋からにおいが漏れることが少ないんです。だから煮魚などのにおいの強い料理でも、ふたを開けるまで家族にバレないと思いますよ(笑)」

【デメリット】安全に使いこなせるか不安!

圧力鍋にはメリットがたくさんあることは分かったが、どうしても気になるのがその安全性。「不慣れな自分が使っても大丈夫?」「普通に使っていて事故になることもあるのでは?」など、不安が生まれてしまうのが最大のデメリットだろう。安全性への不安を理由に購入をためらう人も多いかも。

しかし、メーカー勤務が長く、その機能や構造を熟知しているさいとうさんは「取扱説明書通りに使えば、安全性は問題なし!」と太鼓判を押す。

「使い方が難しそう…と心配な方におすすめなのは、スイッチ一つで調理できる電気圧力鍋です。火を使う通常の圧力鍋でも、定められた安全基準は年々上がっていますし、どこのメーカーも安全性を第一に商品を開発、製造しています。あえて間違った使い方さえしなければ、危険はありません。電気圧力鍋でも通常の圧力鍋でも、取扱説明書には必ず目を通してくださいね」

【デメリット】素材に合わせた加圧時間の調整が難しい

こちらは通常の圧力鍋のデメリット。電気圧力鍋は自動メニューや手動メニュー通りに調理すれば問題ないが、通常の圧力鍋の場合は「素材がやわらかくなり過ぎた!」「素材の形がなくなってしまった!」という失敗をしたことがある人も。

まずは、どんな素材が圧力調理に向いているのか教えて!

「普通の鍋を使うレシピで煮込みの時間が10分以上かかる食材は、圧力鍋での調理が向いています。ホウレンソウなどの葉物野菜やブロッコリーなど、煮えすぎると色が悪くなる緑の野菜は不向き。普通の鍋で別にゆでておいて、食べる直前に合わせるのがおいしくできるこつです。キャベツのように繊維がしっかりした葉物野菜なら、圧力鍋を使うとよりやわらかく仕上がります。例えば、圧力鍋でロールキャベツやポトフを作ると、キャベツがトロトロとやわらかい食感に」

素材によって最適な加圧時間が違うので、その調整も初心者には難しい!

「どの食材にどの程度の加圧時間が必要なのかが分からない時は、自分の持っている鍋の取扱説明書に食材ごとの目安時間が載っているので、それを参考にしましょう」

【デメリット】操作が煩雑

電気圧力鍋は、圧力調理から無水調理、発酵調理まで、さまざまな機能を持つものも多い。一台で何役にも使えるのはお得で便利だが、その反面「操作が煩雑になる」という電気圧力鍋ならではのデメリットも。

「一台で何役にも使えるものは、操作を覚えるまでが大変です。自動メニューでも自分で仕上がりを調整しようとすると、つまみを回したりボタンを押したりといった操作が必要です。また、調理内容によっても操作が変わるので、慣れるまでが大変です。お料理好きの方や味・食感にこだわりたい方には、好みに合わせて火力と時間を細かく調整できる通常の圧力鍋の方が向いているかもしれません」

また、無水調理や発酵調理などさまざまなモードがある場合、モードごとに守るべき項目があり、その点にも注意が必要だ。「例えば、無水調理なら水を入れなくてもいいけど、圧力調理だと水分は必ず必要…など。まずは取り扱い説明書をしっかり読むことが大切です!」

【デメリット】レシピサイト通りに作ると落とし穴が!?

料理の仕上がりを細かく調整したい人には通常の圧力鍋がおすすめとお伝えしたが、ネットやアプリにたくさんあるレシピを参考にすると思わぬ落とし穴が存在する。

「レシピ通りに圧力鍋を使ったのに、うまくできなかった!という経験がある人はいませんか? 実は、このレシピ通りの時間、加圧しても見本の写真のとおりに仕上がらない場合があるのというのも、圧力鍋のあまり知られていない落とし穴なんです」

その理由とは?

「圧力鍋は、そのメーカーのそれぞれの商品によって性能が違っています。現在発売中の圧力鍋を調べたところ、その鍋の性能によって鍋の中への圧力のかかり方が違う。つまり、沸点が105〜128度とばらつきがあるんです。メーカーによっても圧力のかかり方が異なりますし、商品によっては“低圧”と“高圧”を切り替えられる鍋もあるんです」

ということは、レシピで使っている圧力鍋と同じ物を使わないとダメということ?

「全く同じ味を再現するためには、そういうことになりますね。例えば沸点が105度の圧力鍋と128度の圧力鍋では、必要な加圧時間が変わってきますから」

けれど、さすがにレシピに合わせて、いちいち圧力鍋を買い換えることはできない。「電気圧力鍋は操作が煩雑なので『取扱説明書をよく読むのが大切』とお伝えしました。これは通常の圧力鍋でも全く同じ! 自分の持っている圧力鍋がどのくらいの圧力か、その性能を知っておくことが大事なんですね。加圧時間は、まずは取扱説明書に忠実に! これがおいしく仕上げる最大のこつです。お気に入りの料理家さんの使っているものと全く同じ鍋を購入して、その人のレシピ通りに作るのも初心者にはおすすめです」

もしも、取扱説明書をなくしてしまったら?

「メーカーのサイトから閲覧できる場合があるので調べてみてください。とにかく、これから購入する人は、絶対に取扱説明書は捨てないで。ちなみに鍋のふたに付いている保証のシール(SGマーク、PSCマーク)もはがさないままで。万が一、事故などで保証を受ける場合、それらがそろっていることも必要な条件なんですよ」

【デメリット】置き場所の確保が必要

こちらは電気圧力鍋のデメリット。「電気圧力鍋の場合は、普通の炊飯器と同じくらいの大きさがあるので、置き場所を確保しなければなりません」一方、通常の圧力鍋はそこまで場所はとらない。「圧力ふたを使わないで普通のお鍋としても使用できます。物を増やしたくない人には通常の圧力鍋がおすすめですね」

【デメリット】定期的なメンテナンスが必要

電気圧力鍋も通常の圧力鍋も、普通の鍋と違っていろいろな部品が付いている。「特に、ふたのゴムパッキンは定期的な交換が必須です。変えないで劣化したものを使っていると、圧力が正常にかからなかったり、料理の味が格段に落ちてしまうこともあるんです。逆に、取り替えただけで正常に圧力調理ができて味が劇的に変わることもあるんですよ」

どのくらいの頻度で取り替えるべきなのか。

「基本的にゴムパッキンは年に一回、その他の部品も時々点検してください。破損していたら絶対に新しいものと交換すること。部品は、メーカーに連絡すれば購入方法を教えてもらえます。取扱説明書にも書いてありますし、メーカーのサイトで通販できる場合もあります。販売店で取り扱っている場合もあるので調べてみてください」

圧力鍋の買い替え時期は?

「鍋自体は圧力に耐えるように丈夫に作られていて長く使えるので、メーカーから部品の供給がなくなった時が買い替え時でしょうね。また、年々安全性能が高くなっているので、30年以上前のものをお使いなら買い替えを推奨します」

【おまけコラム】圧力鍋に向いている料理は?

圧力鍋を熟知したさいとうさんがおすすめする、圧力鍋を使った料理はある?

「まずはカレーを作ってみてください。でも、いつもの作り方とは少し変える必要があります。野菜は大きめに切って肉と一緒に圧力鍋に入れ、煮込む時に加える水は200~250ccだけ。この作り方なら、火を止めた後圧力が下がるまでの時間が短くなり、よりスピーディーに作れます。あとは少し水を加えてルウを溶かせば、うま味たっぷりのカレーがあっという間に出来上がります」

食材を一度に圧力鍋で煮込んでも大丈夫? ジャガイモが溶けたりしない?

「ニンジン、ジャガイモ、肉、タマネギを入れるカレーなら、ジャガイモは大きめに切って一番上に乗せます。圧力調理後、ルウを入れる前にいったん取り出せば崩れる心配もありません」

電気圧力鍋も、通常の圧力鍋も、その特性を生かしてうまく使いこなせれば最高の味方に。

自分に合った圧力鍋を選んで、快適な圧力鍋ライフを!

取材・文=本嶋るりこ

さいとうあきこ

調理器具メーカーの営業職を経て、2013年より圧力鍋のお料理教室「うちごはんラボ(東京都目黒区)」を主宰。
圧力鍋の魅力と安全で便利な使い方やお手軽レシピを紹介している。活動7年で、延べ2300人以上の圧力鍋ファンを生み出す。圧力鍋の魅力を最大限に生かしたレシピは「びっくりするほど簡単なのに、ちゃんとおいしい」と大好評。2020年からは、YouTubeチャンネルをスタートし、圧力鍋や電気圧力鍋のレシピや情報を発信中。
その他、テレビ取材協力・雑誌やWEBサイトへのレシピ・コラム提供などでも活動中。

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