「江頭250の時代」が到来。「エガちゃんねる」仕掛け人ディレクターが語る、大ヒット動画の裏側
かつて、江頭2:50の活躍をこんなに目にすることになると想像しただろうか。今、私たちはYouTube「エガちゃんねる」で江頭のパフォーマンスを、無料かつ、毎週新しく届けられる動画で楽しむことができる。56歳の彼は肉体的には落ち着きつつ(?)あるものの、コンテンツの鮮度や注目度の点では、ある意味で今が「江頭2:50全盛期」と言ってもいいのではないだろうか。
「エガちゃんねる」の仕掛け人としてその「全盛期」を作ったディレクター・藤野義明氏(ブリーフ団D)が、エガちゃんねるの裏側を綴ったのが本書『エガちゃんねる革命』(宝島社)だ。『めちゃ×2イケてるッ!』などの番組が2018年3月末に終了し、テレビでの活躍の場を失った江頭に、藤野氏がYouTubeプロジェクトを提案。YouTubeチャンネル「エガちゃんねる」は、2020年2月1日の初回から注目を集め、なんと開始からわずか9日でチャンネル登録者数100万人を突破した。そして2022年3月現在、登録者数は290万人に及んでいる。
本書で紹介されるのは、エガちゃんねる開始の革命前夜や、話題となった動画の裏側、運営エピソードなど。数々の困難や江頭ならではの珍事件を乗り越えてきた「エガちゃんねる」の歴史には、エンタメ業界だけでなく、仕事をするすべての人の心に響く示唆が満ちている。
たとえば、新しいことを始めるときに欠かせないものを教えてくれるのが、エガちゃんねる開始までのストーリーだ。テレビマンとしてのキャリアはあるものの、YouTubeの知識はなかったという藤野氏。ディレクター経験で培ったスキルや、芸人・先輩テレビマンから学んだことを活かしながら、江頭がやりたいことを実現するためのコンテンツを、真摯に追求してきた様子が伝わる。
毎週日曜(日付は月曜)深夜2:50に動画を公開する理由や、初回収録直前に知った「乳首NG」というYouTubeのルールへの対処法、YouTubeのセオリーにあえて反したオープニング動画の作り方、お尻に極太の筆を刺して書く「お尻習字」を初回に選んだ理由など、すべての決断の背景には、「バカバカしさ」を追求するプロ意識と、観る者を元気にしたいという、江頭と著者の熱い思いが貫かれている。
「神回」と呼ばれる人気回の裏側も必読だ。たとえば、花火大会がなくなったコロナ禍に「花火を上げようよ!」という江頭の一言から企画がスタートした「夏の花火大会生配信」。ゲリラ豪雨などのハプニングを乗り越え、江頭が花火の打ち上げを成功させた、涙なしでは見られない動画だ(今はダイジェスト版が公開されている)。藤野氏の先輩ディレクターが独自判断で行った中継の切り替えが功を奏したこと、想定外の出来事での大熊英司アナウンサーの機転など、裏側を知れば知るほど、より動画を楽しめる。ナショナルブランドを扱って物議を醸した動画の背景、広告審査の当落をめぐり繰り広げられる「エガちゃんねるvs.グーグル」の攻防といったエピソードも笑えて、刺激的だ。
藤野氏は本書でエガちゃんねるを、体を張る「A面江頭」と誠実でストイックな「B面江頭」の両方を見せるチャンネルにしたいと述べている。その言葉どおり、エガちゃんねるの動画は、どこまでもバカバカしい企画から、江頭の素に迫るもの、江頭の人柄が生む感動ものまで幅広い。そんな充実したチャンネルを通して、江頭2:50という男から日々パワーを得られる視聴者は幸福だ。商材=江頭2:50の魅力を誰よりも理解し、深い愛情を持ち、その力を最大に活かせる方法で、客に価値を届けていく。本書は、型破りな男を通して「売る」のセオリーに迫る、画期的な1冊だ。
文=川辺美希
記事提供=ダ・ヴィンチWeb
この記事で紹介した書籍ほか
エガちゃんねる革命
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