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【週末エンタメ】清野菜名と松坂桃李が体現!実写で紡ぎ出される名作『耳をすませば』の世界観と、10年後の物語

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1989年に雑誌「りぼん」で発表された柊あおいによる少女漫画「耳をすませば」。1995年にスタジオジブリによってアニメーション映画化されたことでも知られるこの作品は、今なおファンの間で不朽の名作として愛され続けている。

そんな魅力あふれる原作で紡がれる、中学生の甘酸っぱい青春時代はもちろん、完全オリジナルとなる“10年後”の物語が加わった実写映画版『耳をすませば』が、2022年10月14日(金)から公開される。大人になった主人公カップルを清野菜名と松坂桃李がW主演で演じた本作で、瑞々しい原作の世界観はどのように再現されているのか?その見どころを探っていく。

互いに淡い恋心を抱く、雫と聖司の「中学生時代」

過去パートでは本をきっかけに出会った少女と少年の淡い恋模様が描かれる (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

大人になった登場人物たちが過去を振り返るという形で、中学生時代のエピソードが語られる実写版『耳をすませば』。その中心にいる少女が月島雫だ。ファンタジー小説をこよなく愛する彼女は、ある日、自分が図書室で借りたどの本の貸出カードにも“天沢聖司”という名前があることを発見。「きっとすてきな人なのだろう」とまだ見ぬ相手に思いをはせる、夢見がちな少女だ。

一方、天沢聖司は、雫に対してツンケンとした態度を見せるクールな少年だが、実際は雫を意識するあまりぶっきらぼうな振る舞いをしてしまう“ツンデレ男子”。チェロ奏者になるという大きな夢に向かってひたむきに努力する一面を持っている。

2人は、聖司の祖父が経営する雑貨屋の地球屋で多くの時間を共にし、互いに引かれ合うようになる。そんなある日、聖司が夢を叶えるためイタリアに渡ることになり、お互いの夢のために離れ離れになることを決断。必ずまた会おうと約束し、雫も作家という自らの夢に向かって歩み始めていく。

ジブリアニメでも描かれた名シーンが実写で鮮やかによみがえる

雫と聖司の出会いなど、原作の場面が忠実に描かれている (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

本作の大きな見どころの1つが、ジブリアニメ版にも登場した数々の場面が実写でも再現されている点だ。例えば、雫と聖司が“最悪の出会い”を果たすアニメでも印象的なシーン。初対面にもかかわらずどこか上から目線の聖司に対し、「やなやつ!やなやつ!」と雫が連呼する場面は、実写版にも登場。雫と聖司の中学生時代を演じた安原琉那のはつらつとした魅力と中川翼のどこか大人びた雰囲気と相まって、原作のイメージそのままの一幕に仕上がっている。

猫のムーンを追いかける電車のシーンも (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

さらには、電車で見かけた猫のムーンを追いかけて“地球屋”にたどり着くファンタジックな場面から、教室まで雫に会いに来た聖司にクラス中がざわつくシーン、屋上での会話をクラスメイトに聞かれている一幕まで…。中学生の雫と聖司の関係性を語る上で、象徴的な名場面が次々とスクリーンに映し出されていく。

夕子と杉村の関係も盛り込まれている (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

また雫の親友である夕子が思いを寄せる杉村との会話で見せた涙など、サブカップルとして登場する脇役たちの物語も丁寧に紡ぎ出されていく。ファンにとっては堪らない名場面を追体験できるだけでなく、原作が未見の人にとっても物語を理解しやすい構成となっている。

オリジナルストーリーで紡がれる雫や聖司らの“10年後”とは?

そんな過去パートはもちろん、本作の軸となるのが原作にはない“10年後”の物語。中学生だった登場人物が大人になった1998年の世界が、映画の完全オリジナルストーリーとして描かれており、雫や聖司、夕子、杉村といったキャラクターたちもさまざまな人生を送っている。

清野菜名が大人になった雫を演じている (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

24歳となった雫(清野菜名)は、出版社で児童書の編集者となっており、激務に追われながらも、作家になる夢を追い続けていた。しかし、なかなか芽が出ない現状に焦り、遠く離れたイタリアで奮闘する聖司を思い浮かべて、なんとか気持ちを奮い立たせる…という日々を送っていた。

聖司役の松坂桃李も、原作のキャラクターの雰囲気を放っている (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

一方の聖司(松坂桃李)もまたチェロ奏者として、一定の成功は納めながらも、譜面に忠実な演奏を追い求めるあまり、音楽を楽しむという初心を忘れてしまう苦難の時を過ごしていた。

そんなある日、仕事で大きなミスをしたことをきっかけに、このまま夢を追うべきか?それとも仕事に専念するか?はたまた聖司と遠距離恋愛の関係を続けるべきなのか?…といった人生の岐路に直面した雫。気持ちを整理するためにはるばるイタリアの聖司の元を訪れることに…。

雫と聖司が人生の難しさに頭を悩ませる一方、いまでも雫とともにルームシェアをする親友の夕子(内田理央)は、杉村(山田裕貴)と結婚を控えるなど順風満帆。アニメ版ではエンドクレジットの背景として一緒に帰宅する様子がさりげなく描かれただけだった2人だが、10年後、その恋が成就していたことが明らかになる。

夕子と杉村のその後の関係にも注目 (C)柊あおい/集英社 (C)2022「耳をすませば」製作委員会

実写版『耳をすませば』に込められた普遍的なメッセージ性

夢みがちな少女が体験するファンタジックな物語が展開した原作に対し、本作で描かれるのは、仕事や恋愛における本音と建前のギャップにもがきながら、自分だけの生き方を模索する主人公たちの姿だ。

自分の気持ちよりも仕事が無難に進むことを優先するようになってしまう雫は、そのことを見透かされて作家からは担当編集を外されてしまう始末。子どもの頃に抱えていたときめきを失い、夢を追い続ける聖司が住む世界との違いに悩み…と、厳しい現実に直面する様子がリアルに描かれていく。

問題と真摯に向き合い、成長していく雫。悩み抜いた先に彼女が下すとある決断、そして彼女に訪れるある展開とは…?実写版ならではのリアリティにあふれた物語には、共感を覚えるはずだ。

文=ケヴィン太郎

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『耳をすませば』

2022年10月14日(金)より全国ロードショー
作品詳細はこちら

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