【週末エンタメ】トム・クルーズ初のオスカー獲得なるか!? 時代の流れで変化し続けるアカデミー賞、今年の見どころは?
昨年は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)が国際長編映画賞を受賞したことも大いに話題となったアカデミー賞。この映画の祭典がアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで日本時間2023年3月13日(月)に開催され、その模様が「生中継!第95回アカデミー賞授賞式」としてWOWOWで同時通訳付きで放送される。
多くのセレブが一堂に介し、その華やかな光景を眺めているだけでも楽しめるアカデミー賞だが、近年の風潮や見どころを知っておけば、より一層授賞式が楽しめるはず。ここでは今年のアカデミー賞のポイントを解説していく。
多くのセレブが登場し、華やかな瞬間が繰り広げられるアカデミー賞
第94回アカデミー賞授賞式より (c) Michael Baker / A.M.P.A.S.
第87、88回と2年連続で4つの演技部門の全ノミネートが白人俳優となり「白すぎるオスカー」とやゆされたことも記憶に新しいアカデミー賞。さらに投票権を持つアカデミー会員6,261人の構成のうち、約92%が白人、75%が男性だったことが明らかにされたこともあり、以降は多様性を重視するさまざまな改革が行われている。
例えば、女性や白人以外の人種の会員数を倍にするという目標を2020年に達成したほか、2024年から採用される新基準として、作品賞ノミネートに関する「主要な役にアジア系やヒスパニック系、アフリカ系などの人種または民族的少数派の俳優を起用する」や、「製作スタッフの重要なポジションに女性やLGBTQ+、障がい者が就く」などの満たさなければならない項目も設けられた。
アジア系や女性監督も大躍進! さまざまな“マイノリティー”が栄冠を手にする昨今のオスカー事情
昨年は、トロイ・コッツァーの感動的なスピーチを見守るユン・ヨジョンの姿も印象的だった
第94回アカデミー賞授賞式より (c) Blaine Ohigashi / A.M.P.A.S.
ノミネートや結果にもそんな改革の結果が現れてきている。2020年に韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)が作品賞を含む4冠という大旋風を巻き起こしたことは多くの人が覚えていると思うが、それ以外にも2021年には韓国系移民一家のアメリカでの暮らしを描いた『ミナリ』(2020年)でユン・ヨジョンが助演女優賞を受賞。
女性監督がおととし、昨年と2年連続でオスカーを手にした
第94回アカデミー賞授賞式より (c) Michael Baker / A.M.P.A.S.
また『ノマドランド』(2020年)のクロエ・ジャオ、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)のジェーン・カンピオンと、女性監督が2年連続で監督賞を受賞。昨年は『コーダ あいのうた』(2021年)のトロイ・コッツァーがろう者の俳優として史上2人目の受賞を果たし、さらに『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021年)のアリアナ・デボーズは、アフロラティーナ(アフリカとラテンアメリカにルーツを持つ女性)として初めてオスカーを手にした。
クィアを公表した有色人種としても初のアカデミー賞受賞となったアリアナ・デボーズ
第94回アカデミー賞授賞式より (c) Michael Baker / A.M.P.A.S.
今年もノミネートの時点で多様性を感じることができ、中国系アメリカ人家族を主人公とした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』からは主演女優賞にミシェル・ヨー、助演男優賞にキー・ホイ・クァン、助演女優賞にステファニー・スーという3人のアジア系俳優が選出された。
さらに『ザ・ホエール』からもベトナムにルーツを持つホン・チャウが助演女優賞にノミネートされており、4人ものアジア系が選出されるこれまでにない躍進を見せている。
トム・クルーズ念願の初受賞は? 注目が集まる主要4部門の行方をチェック!
渾身の企画として満を持して公開され、トム・クルーズにとって最大のヒット作となった『トップガン マーヴェリック』
(c)2023 Paramount Pictures.
そんなオスカーの中でも特に熱い視線が注がれると感じるのが「作品賞」「監督賞」「主演男優賞」「主演女優賞」の主要4部門だ。
王道のエンタメ大作から味わい深い小品、個性的な作品まで多彩な10作が並ぶ「作品賞」では、前哨戦となる賞レースを賑わせてきたということから考え、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『フェイブルマンズ』『イニシェリン島の精霊』が受賞に一歩近い存在に思える。
また全作品に順位を付けていき、その総合点で競われるという「作品賞」の投票方式を考えると、多くの会員が上位にランクインさせるであろう『トップガン マーヴェリック』も有力候補の1作。主演のトム・クルーズはプロデューサーも務めているが、本作で念願のオスカーを初めて手にすることができるのか? 大いに注目したい。
「監督賞」は、半自伝的な1作『フェイブルマンズ』の大御所スティーヴン・スピルバーグから、独自の作風が光る『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の若き監督コンビのダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート。『TAR/ター』で16年ぶりに監督復帰を果たしたトッド・フィールドに、劇作家としても成功を収める『イニシェリン島の精霊』のマーティン・マクドナー、そして『逆転のトライアングル』のスウェーデンの鬼才リューベン・オストルンドまでが名を連ねた。ゴールデングローブ賞など前哨戦はスピルバーグ監督が一歩リードしている印象だ。
あらゆる映像を見るなど徹底した役作りでプレスリーになり切った『エルヴィス』のオースティン・バトラー
(c) 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
実在の人物を演じた役者が有利とも言われる俳優賞。その点で言えば「主演男優賞」は、約3年間にもおよぶ役づくりでプレスリーになりきった『エルヴィス』のオースティン・バトラーが有力かもしれない。しかし、前哨戦で圧倒的な勝率を誇っているのがコリン・ファレル。訳もわからず親友に絶縁されてしまった男の落胆や悲哀といった感情を表した、『イニシェリン島の精霊』での豊かで繊細な演技が高い評価を受けている。
一方、「主演女優賞」は過去に2度オスカーを受賞している名優、ケイト・ブランシェットが前哨戦で大きくリードしている。『TAR/ター』では名門楽団を率いる天才指揮者にふんしており、「キャリア最高の演技」と絶賛を受けている。その対抗馬と目されているのが、ミシェル・ヨー。苦しい生活を送る主婦の悲哀、いらだちを体現したかと思いきや、得意とするアクションまで生き生きとした演技を見せている。
「生中継!第95回アカデミー賞授賞式」では、スペシャルゲストの中島健人(Sexy Zone)が3年ぶりにレッドカーペットからの中継を予定しているほか、映画ライター・小西未来もレッドカーペットリポーターとして現地から情報を届ける。東京のスタジオでは案内役のジョン・カビラと宇垣美里が各賞の発表を見守るほか、映画監督・大友啓史とアメリカ在住の映画評論家・町山智浩(リモート出演)をゲストに迎えて、ポイントを解説。また、授賞式の見どころや歴史を紹介する関連番組も多数放送されるので、併せてチェックすればこれまで以上に「アカデミー賞」を楽しめることだろう。
文=ケヴィン太郎
インフォメーション
「生中継!第95回アカデミー賞授賞式」
2023年3月13日(月)午前7:30にWOWOWプライムで放送
「第95回アカデミー賞授賞式(字幕版)」
2023年3月13日(月)午後10:00にWOWOWプライムで放送
「第95回アカデミー賞ミニガイド ~スター誕生の瞬間~」
2023年3月10日(金)ほかにWOWOWプライムで放送
「第95回アカデミー賞ノミネーション」
2023年3月10日(金)ほかにWOWOWプライムで放送
「第95回アカデミー賞授賞式ダイジェスト(字幕版)」
2023年3月19日(日)にWOWOWプライムで放送
『トップガン マーヴェリック』
2023年3月11日(土)ほかにWOWOWシネマほかで放送
『エルヴィス』
2023年3月20日(月)ほかにWOWOWシネマほかで放送