毎日着る「スーツ」、どうやって選んでる?意外と知らない選び方と長持ちさせる方法を「洋服の青山」に聞いてみた
社会人なら誰もが1着は持っている「スーツ」。しかしひと口にスーツと言ってもいくつか種類があり、そのうえカラーバリエーションも豊富なので、組み合わせは無数にある。ここまで多種多様だと、「自分に合っているスーツがわからない」と感じる人も少なくないだろう。
今回は普段何気なく着ているスーツについての疑問を解消すべく、「洋〜服の青山♪」でおなじみの「洋服の青山」を運営する、青山商事株式会社(以下、青山商事)営業部グループ長の小野一樹さんに、スーツの正しい選び方と昨今のトレンドを聞いた。
スーツには「アンボタンマナー」というものがあり、スーツの1番下のボタンは留めないのが基本
スーツの基本的な種類としては、ボタンが一列に配置されている「シングルスーツ」、二列に配置されている「ダブルスーツ」の2種類のジャケットがある。これにスラックスを加えたのが、最もオーソドックスな形とされる「ツーピース」、さらにベスト(ジレ)を合わせたクラシックなスタイルを「スリーピース」と呼ぶ。
スーツのシーズンは3月~9月(春夏)と10月~2月(秋冬)の2期に分かれており、各シーズン開始の数カ月前から販売されている。小野さんは「シーズン中だとすでに売り切れている種類があるかもしれませんので、お早めにお買い求めください」と話す。
カラーバリエーションに関しては、大きく「ブラック」「グレー」「ネイビー」「ブラウン」の4色に分類され、濃淡さまざまな商品があるため「どんな場面で何色を選べばいいの?」と迷ってしまう人がいるかもしれない。そこでTPOを踏まえた各カラーの合わせ方を聞いた。
「ネイビーは相手に『誠実』『真面目』という印象を与えることができるので、ビジネスシーンで重宝されます。また、爽やかな色味ですので、新社会人になる方にはぴったりですね。一方でブラックはネイビーと同じ印象ではあるものの、よりフォーマルな場面で好まれるカラーと言えます。あと、色の濃淡でイメージがガラリと変わるのはグレーですね」
ネイビーのスーツはフレッシュなイメージに
濃いグレーが落ち着いた印象を与えるのに対し、ライトグレーのように明るくなると一気に洗練された印象になり、同系色でもまったく違う雰囲気になる。「ライトグレーのスーツをスリーピーススタイルでイギリス紳士のように着こなすのもいいですね!」と小野さん。なお、ブラウンもグレーと同じく、インフォーマル向きのカラーとして人気を得ているようだ。
「ライトグレーやブラウンのような比較的カジュアルな装いは、最初の1着目ではなく、会社になじみ仕事にも慣れた2~3年目に取り入れるのがおすすめで、主にパーティーや会食などの着用に適しています。また、春夏であれば爽やかなネイビー、秋冬は暖かそうなグレーやブラウンと、『季節感』を意識することも大切ですね。そのほか『ベルト』『革靴』といった革ものは、スーツの色に合わせる、もしくは差し色にすることで見栄えが良くなりますよ」
グレーに続き、インフォーマルなカラーとして青山商事がおすすめするのはブラウン
自分の職場環境に適したスーツを新調したものの、人によってはほんの数カ月でくたびれてしまい、すぐに買い替えなければならない事態になることも。では、長持ちさせるにはどのように扱えばいいのだろうか。
「コツは、『ローテーションで着まわす』ことです。例えば、週5日勤務の方でしたら最低2着、可能であれば3着そろえていただくと劣化しにくくなります。ただ、新入社員の方ですと、最初から3着の保有は難しいかと思いますので、まずは2着から始めてみてください」
常備する3着のうち2着は「ダークカラー」、残りの1着を「ライトカラー」にしておけば、どんなシーンでも対応できる
だが、職種によってはスーツを着て膝をついたり、動き回らなければいけないこともあるだろう。
かと言って一度着るたびにクリーニングを利用しようものなら、多額の出費を伴ってしまう。そうならないようにするために必要なのが、自宅で行う日々のメンテナンスだ。
「ジャケットの『ラペル(襟)』は“スーツの顔”と言われるほど重要で、ここがくたびれてしまうと途端に粗末な見た目になってしまいます。そのため、長持ちさせるにはジャケットが型くずれしないある程度しっかりした『ハンガー』を選んでください。パンツは『センタープレス(真ん中に入っている線)』が消えてしまったら買い替え時です。対策として『スラックスハンガー』にかけると重みでシワを伸ばせますので、ぜひやってみてください!」
さらに霧吹きをかけるとシワを伸ばせるので、上記の方法とあわせて試してみよう。小野さんは「毎日アイロンをかけるのは大変なので、こうした時短テクニックを使ってタイムパフォーマンスを高めてください」と教えてくれた。
ビジネスカジュアルが推奨されるなか、上下色違いのスーツを着る「ジャケパンスタイル」の人も増えている
スーツのジャケットは、長らくシングルスーツがトレンドだったが、近頃は1980年代に流行したダブルスーツを着る人が増えてきている。これはクラシック回帰の流れによって、再びフォーマルな装いが好まれているからなのだとか。
「スーツの流行りはファッショントレンドに準拠する傾向があり、最近は好みも多様化してきているためか、こだわりの1着を仕立てるためにオーダーメイドされる方も増えてきています。最近はビッグシルエットが一部ビジネスにも取り入れられる傾向があり、ファッションとしては良いですが、体にフィットする昔からのテーラードスーツのほうがよりきちんとして見えるので、TPOに合わせた使い分けが大事ですね」
昨今のクラシック回帰によって「ダブルスーツ」が再燃!シングルスーツにはない華やかさが魅力
タブルスーツのアンボタンマナーは、すべてのボタンを留めるのが基本。しかし下のボタンについてはどちらでもOK
また、2023年のトレンドカラーはグレーだという。前述の通りスリーピースとの相性が抜群で、ベスト(ジレ)を重ね着してファッショナブルに着こなしたり、ベストを防寒着としても活用できたりとコストパフォーマンスのよさが大きな魅力だ。「汎用性の高さから、ベストのみを購入される方もいます」と小野さん。好みの多様化もさることながら、機能性とファッション性を併せ持つハイブリッドなスーツが求められている。
明るめのグレー×スリーピースで、スーツの本場・イギリスの伝統的なスタイルに
スリーピーススーツはベストを着ているので、ジャケットのボタンを留めなくても大丈夫。ベストの1番下のボタンもジャケットと同様に、留めないのがベター
なお、青山商事は2021年9月にビジネスカジュアルブランド「ACTIBIZ(アクティビズ)」を発足。機能性とファッション性のどちらも兼ね備えており、丸洗いが可能だったりストレッチがきいていたりと、手軽にメンテナンスができるのもポイント。服装に関して比較的自由な職場に勤める人におすすめだ。
機能性とファッション性を兼ねそなえた「ACTIBIZ」。メンテナンスもほぼ不要なので、スーツに慣れていない新社会人でもストレスなく着こなせる
最後に小野さんから、「自分に合ったスーツを選び、自分の気持ちを高めながらも相手に良い印象を与えることが大切ですよ」とアドバイスが。自分に合ったスーツを新調して、新しい環境や新たな出会いをより良いものにしてみては?
取材・文=西脇章太(にげば企画)
記事提供=ウォーカープラス