大人もハマる! カプセルトイの魅力
昭和時代に登場し、今なお根強い人気を誇るカプセルトイ。人気キャラクターのキーホルダーや、一風変わったアイデアグッズなどが200~500円ほどで買えるだけでなく、何が出るか分からないといったワクワク感も味わえるとあって、子どもはもちろん、かわいいものが大好きな大人の女性も夢中にさせている。今回、大人もどっぷりとハマってしまうカプセルトイの魅力や近年の人気商品の傾向、そして楽しみ方などを株式会社築地ファクトリー代表取締役で一般社団法人日本ガチャガチャ協会 代表理事・小野尾勝彦さんに教えてもらった。
専用の機械に指定の価格分の硬貨を入れて購入する、直径7cmのカプセルに入ったさまざまなアイテムを指す「カプセルトイ」。昭和時代は人気アニメのキャラクターを模した「キン肉マン消しゴム」(以下、「キン消し」)などが男子小学生の間で大ブームを巻き起こした。
「カプセルトイは、子どもたちがお小遣いの範囲内で『何が出てくるか分からない』という楽しみを味わえるところが、大きな魅力だと思っています。また、日本には『おみくじ文化』が根付いていますよね。100円玉3枚くらいの値段で、『欲しいアイテムが手に入るかどうか』と一喜一憂できるというのも、カプセルトイの面白さではないかと感じています。そして、欲しかった物かどうかは別として、必ず何らかのアイテムが手に入るという点も根強い人気の理由だと思います」(小野尾さん)
子どもの頃にコンプリートできなかった「キン消し」を今の財力で買い集めたり、お気に入りキャラクターのアイテムを全て手元に置いておきたい、という想いから小銭を用意してカプセルトイを回し続けたり…。そんな「大人買い」と呼ぶにふさわしい遊び方も今では珍しくない光景のよう。
「大人がカプセルトイにハマる理由としては、300円前後という低価格ながら、非常にクオリティーの高いアイテムが多いことが大きいと思います。そして、ネットの発達によって、SNSに『こういった商品があるよ』と、工夫を凝らして撮影した画像をアップしたり、シリーズをコンプリートするためにアイテムを交換したりと、コレクターズアイテムやコミュニケーションツールとしてのニーズが高まったことも理由に挙げられますね。2017年にはカプセルトイ専門店もオープンするなど、大人の女性も立ち寄りやすい環境になっていて、マシンの前で『欲しいアイテムが出ますように』と拝んでいる女性の姿はよく見かけますね。また、マシンを回さずとも、メーカーのネットショップから欲しい商品を箱買いして、全種類をコンプリートできるようになったのも大きな変化だと思います」(小野尾さん)
キャラクター商品を中心に、好奇心を刺激する面白アイテムも人気!
根強い人気を誇るキャラクターのアイテムに始まり、SNSで話題を呼んでいるイラストのフィギュア化、そして「こんなアイデアがあったとは!」と驚くような斬新なアイテムなど、バラエティー豊富なアイテムに出合えるのもカプセルトイの大きな魅力のひとつ。
「近年は、ネコやカエルといったキャラクター商品に大人の女性人気が集まっていますね。ネット発のクリエーターさんとのコラボ商品も次々と登場しています。男性向けだと車やバイク、飛行機といった乗り物系が根強い人気を誇っています。また、バスの停車ボタンや非常ベルなどの変わり種アイテムは、まさにカプセルトイならではの商品。ここ最近では、野菜のねぎを入れるための『ねぎ袋』が大ヒットしましたが、着眼点がすごいなと思いました」(小野尾さん)
インパクト大の異色グッズ「ねぎ袋」って? 誕生秘話を聞いてみた
2022年9月に発売されたカプセルトイ商品「ねぎ袋」は、その名の通り、ねぎを入れるための袋。SNSで大きな話題を呼び、2023年4月に登場した第2弾も大ヒットした同商品を開発した(株)ターリン・インターナショナルの広報宣伝チームに誕生のきっかけを伺った!
<商品誕生のきっかけについて>
「買い物袋から飛び出たねぎが汚れたり傷ついたり道路に落ちているのを見てふびんに思ったからです。誰もが抱えているであろう『ねぎ持ち帰りにくい問題』というあるあるを商品化しました」
<周囲からの反応は?>
「想像以上の反響にとても驚きました。普段、あまりカプセルトイを購入しないお客さまにもご購入いただいたり、実際にスーパーでねぎ袋を使用して便利だと言っていただけてとてもうれしかったです。また、ねぎ持ち帰りにくい問題を想定した商品なのですが、SNSではねぎの他にごぼうや、ポスター、ペンライトなど細長い物を入れて使っている方も多く見かけました」
<商品のこだわりについて>
「さまざまなねぎの買い方、持ち方に対応できる種類を考えたことです。ひと目で分かるねぎ感のあるデザインと、ねぎは長さや太さがさまざまなのでそれに対応したサイズ感の検討に苦労しました」
かつてはショッピングモールのキッズコーナーが主な設置場所だったカプセルトイも、大人の女性がメインユーザーとなってからは専門店や駅構内など、気軽に立ち寄れるスペースがメインに。日本の文化としてすっかり根付いたカプセルトイだからこそできる活動に小野尾さんは取り組んでいる。
「私が代表理事を務める一般社団法人日本ガチャガチャ協会では、カプセルトイを使って街を活性化する『街ガチャ』をプロデュースしています。現在、千葉県船橋市で、市内の有名アイコンをアクリルキーホルダー化してカプセルトイマシンで販売しています。今後は東京都の上野でも実施していきます。また、『ガチャガチャがある国は平和です』を合言葉に、船橋市内の2カ所で『ドネーションガチャ ウクライナの子供達へ』を展開し、多くの方にご協力いただきました」(小野尾さん)
左が千葉県船橋市のアイコンがモチーフのカプセルトイ。右はドネーションガチャの一部
日本各地に専門店が誕生し、さらに身近な存在になっていくカプセルトイ。少しのお金でワクワクとかわいいグッズがゲットできるエンターテインメントをぜひ、楽しんでみては?
取材・文=中村実香
小野尾勝彦
株式会社築地ファクトリー代表取締役、一般社団法人日本ガチャガチャ協会 代表理事。1994年にカプセルトイ大手の株式会社ユージンに転職。その後、大手玩具メーカーの株式会社タカラトミーアーツを経て2019年に独立後は、業界をさらに盛り上げるため、カプセルトイのコンサルティング会社である「株式会社築地ファクトリー」を設立。「一般社団法人日本ガチャガチャ協会」も設立し、カプセルトイの歴史探求や講演なども行っている。