減給や転勤を強制?どこからがセクハラ?学校では教えてくれなかった労働問題のこと
“大人だったら知っていて当然”といわれる知識が社会にはたくさん存在します。この連載では、「子どもの環境・経済教育研究室代表、元公立鳥取環境大学経営学部准教授」の泉美智子さんが監修した「学校では教えてくれなかった社会で生きていくために知っておきたい知識」をご紹介。労働のこと、お金のこと、結婚・子育てのこと、介護のこと、住まいのことなど、身近な役立つ知識を図解とともに紹介します。
今回は、労働問題のさまざまなクエスチョンにお答えします。減給や転勤はありえるの? セクハラ・パワハラのボーダーラインについてなど図解でご紹介!
Question 1:給料が下がったり、転勤を強制されることってあるの?
ANSWER:減給や転勤はありえる。納得がいかない場合は相談しよう。
ドラマや漫画で、ミスをしたことで給料が下げられてしまう描写を見て、不安になったことがある人もいるかもしれません。しかし、基本的に賃金は会社と個人の契約によって決まるもので、一方的に会社が減額することはできません。ただし、減額が仕方ない、上のようなケースもあるので知っておくとケースに当てはまらないのに減給をされてしまった場合は、まずは労働基準監督署に相談をしてみるのがいいでしょう。
また、地元や家族と離れたくない人は、転勤についても気になるでしょう。転勤は、雇用契約上の根拠があれば業務命令として指示することができるので、従わない場合は、業務命令違反になってしまいます。しかし、その転勤に必要性がない場合や、配置動機や目的が不当な場合、転勤により労働者に著しい不利益がある場合などは、無効になることもあります。
近年は、社会や企業が個人のワークライフバランスを重視するようになってきています。
「言っても無駄だ」と思わずに、自分も会社も納得のいくように、相談してみることが大切です。
≪POINT≫
■原則として、一方的な減額は法律上厳しい
■賃金を減額できるケース
・役職と賃金が結びついている
就業規則などに、役職と賃金が結び付いている制度が明示されていれば、降格により減給になることがある。
・評価と賃金の対応が明らかにされている
就業規則などに評価と賃金の対応関係が記載されていれば、評価によって減給になることがある。
■転勤を拒否できる3つのケース
1)配置転換の必要性
人手を必要としていない部署に配属するなどは配置転換の必要性が認められない
2)動機や目的が不当
「言うことを聞かないから」など、不当な目的による配置転換は認められない
3)労働者に著しい不利益がある
子育てや介護などの過程の事情によって転勤が拒否でいる場合がある
ANSWER:「おかしい」と思ったら忖度せず相談をして!
セクハラは性的な嫌がらせにより業務を行いにくくするもので、環境型と対価型に分類できます。パワハラは、職務上の優位性を背景に、業務の範囲を超えて苦痛を与えるもの。いずれも業務をする上での妨げや、精神的苦痛をもたらすため、何かあったら、記録や音声を残して、社内の労務課や人事課、労働基準監督署に相談しましょう
≪POINT≫
■セクハラの種類と例
・環境型セクハラ
職場環境を不快にさせる性的な嫌がらせ
性的な画像を目につくようにする。飲み会で異性の身体をさわる。
・対価型セクハラ
業務上の利益・不利益と引き換えに行われる性的な嫌がらせ
昇進と引き換えに関係を要求する。セクハラに抵抗されたので不利な配置転換をする。
■パワハラの6つの類形
1)身体的な攻撃
殴る・蹴る、突き飛ばすなど。指導に熱が入り、軽く小突いてもパワハラに当たる。物を投げるなどもNG。
2)精神的な攻撃
「役立たず」「バカ」など、暴言を吐いたり、お勢の前で人格を否定したりする。十分な指導をせずに放置することもこれに当たる。
3)過大な要求
どうやっても達成できないようなノルマを課し、それを達成できないと退職を迫ったり、攻めたりする、休日出勤の強要などもこれに当たる。
4)過小な要求
簡単な仕事しか与えず、キャリアに見合わない仕事を押しつけること。
5)人間関係の切り離し
無視したり、チームから外したり、仲間はずれにすること。意図的に打ち合わせから外す、プロジェクトにかかわらせないなど。
6)個の侵害
プライバシーを詮索したりすること。しつこく飲み会に誘い、不参加の理由を問いただしたり、家族の悪口を言ったりする。
減給や転勤、パワハラについてなど、いざという時のために知識を得ておきましょう。
泉美智子
子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)
全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など講演活動の傍らテレビ、ラジオ出演も。環境、経済絵本、児童書の執筆多数。『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞社)、『学校では教えてくれなかった 社会で生きていくために知っておきたい知識』(KADOKAWA)などを監修。
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