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映画『劇場版 おいしい給食 卒業』に主演の市原隼人「どの作品よりも一番ハード(笑)」

‘19年、‘21年に放送された人気ドラマ「おいしい給食」の劇場版第2弾『劇場版 おいしい給食 卒業』が5月13日(金)より公開中。

ドラマ版に続き主演を務めるのは、数々の話題作に出演し、その演技が鮮烈な印象を残す市原隼人。ジャッキー・チェンとブルース・リー、そして揚げパンをこよなく愛する市原に、本作の魅力などを語ってもらった。

(C)2022「おいしい給食」製作委員会

――劇場版の第2弾が完成しましたが、今の率直な気持ちをお聞かせください。

「ドラマのシーズン2、そして劇場版の第2弾が生まれる奇跡をくださったのはひとえに『おいしい給食』という作品を好いてくださったお客さまのお気持ちの賜物ですので感謝しかありません。映画は、ドラマとはまた違ったスイッチが入りますので、新たな甘利田(あまりだ)の一面を楽しんでいただける作品になっていると思います。早くこの作品をお届けしたい気持ちでいっぱいです」

――甘利田を演じる上で何か変化を加えたところはありますか?

「基本的には、シーズン1から変えていませんが、強いて言えば、給食を食べる前の踊るシーンでしょうか。元々台本には踊る設定はなかったので、シーズン1の時は踊るといっても、ほんの少しだったんです。ですが、第2話、第3話と回数を重ねていくうちに、もう少し楽しんだ方がいいのかなと思うようになり、そのうちにだんだんギアが上がってしまって、シーズン2になると、トップギアから“ファーン!”っていう感じで…もう迷いはなくなりました(笑)。あと、給食のシーンに新たな演出が加えられました。甘利田の給食愛がさらに増して翻弄(ほんろう)される姿や、今までとは違う至福の一面が現れるなど、いろいろ楽しんでいただけると思います」

――アクション作品さながらの肉体を駆使した表現も随所に見られましたね。

「はい(笑)。デビューした映画のパンフレットにも書いてあるんですが、僕はジャッキー・チェンとブルース・リーが大好きで、これまでも結構ハードなアクションシーンもこなしてきましたが、今までのどの作品よりも本作が一番ハードでした(笑)。気温40度を超える中での撮影が続き、子供たちや共演者、スタッフたちみんなと共闘しながら乗り越えた時間は、僕にとってかけがえのない財産であり誇りです」

――“酔拳”を披露するシーンも!

「甘利田はお酒に弱くて、二日酔い状態で校門に立っているシーンですね。実は、その動きも台本には何も書いていなかったのですが、そこは“酔拳”しか思い浮かびませんでした(笑)。自由にやらせてもらいました。本番前には端の方で練習していました(笑)」

――フレッシュなキャストが多い現場だったと思いますが、彼らとはどのように過ごされましたか?

「クランクイン前にみんなで顔合わせをして台本を読み合わせる時間があったのですが、その時に『ドラマや映画は衣食住に入っていないので、なくても成立してしまう。だからこそ必要とされるために僕らが共闘して作品の存在意義を見いださなくちゃいけない。そのために一生懸命一つひとつ乗り越えていきましょう。今までは楽しむ側だった皆さんが、今回はお客さまを楽しませる側になるんです。その経験を経て目には見えない力をたくさん培っていただき、成長した皆さんの姿を見ることを楽しみにしています』という話をさせていただきました。生徒たちがクランクアップの時に、卒業証書を一人ひとりに渡したのですが、みんな号泣していました。一生懸命頑張ってくれた子供たちと一緒に過ごした時間は、本当にぜいたくな時間だったと感じています。子供たちには可能性しかありません。僕は子供たちが大好きなので、本当に楽しい時間でした」

――作品中の印象的なメニュー、また市原さんの学生時代の思い出に残る給食メニューは?

「作品で印象的だったのは、ドラマのシーズン2にあった全部甘々な献立の回です。それはドラマだから成し得た給食でしたが、普段味わえないような全部が甘いメニューで、その日は忘れられない一日になりました。学生の頃の好きなメニューは揚げパン一択です。きな粉がたっぷりついていて、それが好きで好きでたまらなかったですね。給食はとにかく誰よりも早く食べたいと思っていました。何だか分からないですが、子供の時って足が速いやつがカッコいいとか、給食を早く食べ終わるやつがカッコいいと思っていたので、とにかくもう誰にも負けないように急いで食べていましたね(笑)」

――甘利田の奇想天外なキャラクターはどうやって出来上がったのですか?

「原作も何もない完全オリジナルの作品なので、まったくの0から1を作り出し、そして甘利田が生まれました。台本にも演出にも“遊び”がたくさんあるので、僕自身もいろいろな芝居を試して、たくさん遊べるのですが、いろいろ熟考し過ぎて、撮影期間中はほぼ寝られなかったです(笑)。給食のシーンはナレーションの読み方や抑揚のつけ方やテンポなどを先に考えてからそのナレーションに合わせて、ここはこうして、こうやって動いてと全部形を決めてから入らないといけなかったので、すごく悩みました。でも他の作品ではこんなに自由に自分で色を付けることはできないので、これは本当にぜいたくな悩みだと思ってやらせていただきました」

――作品中では80年代の魅力も表現されていますね。

「今よりも人と人とがたたえ合い支え合って生きている時代で、僕はすごく好きです。古き良き心じゃないですけど、『いただきます』『ごちそうさま』という言葉は日本独特の文化です。一つひとつの所作を見直し、しっかりと顔を合わせ、人が寄り添って生きていくのが社会だということを忘れないでいただきたいです」

――綾部真弥監督が市原さんに求めたものは何ですか?

「基本的には自由にやらせていただきました。まずは自分で動いて、その上で監督としっかり話をしました。最も大切にしたのは、大衆に向けるエンターテインメントとしての重要性です。親子で見ていただいても子供たちに目を背けさせるシーンが一切ないように、お子さんが見ても年配の方が見ても楽しめる作品にしましょうと。キングオブポップな作品を目指しながら、しっかりとしたキャラ設定と環境と物語性など、全てを備えた骨太な作品にしましょうと何度も話し合いました。使われなくてもいいからいろいろ撮ってみましょうと監督に話をし、実際、使われなくてお蔵入りになっているカットもたくさんありますが、それを許容してくださっている綾部監督の器が素晴らしいと思っています」

――まさにエンターテインメント全開の作品ですね。

「僕の芝居はアクションが多いですし、笑いよりも真剣勝負、とにかく相手を倒すまでは絶対に笑いを見せない。基本的にそういうスタンスでやってきましたが、『おいしい給食』という作品に出会って、子供たちやご年配の方も含めた全ての方々に楽しんでいただけるエンターテインメントの重要性を強く感じました。この作品の一番の魅力は滑稽な姿を見せることなんです。好きなものを好きと胸を張って言えない、好きなものを我慢して人生を謳歌(おうか)できないなんてもったいない。ぜひこの作品を観ていただいて、甘利田が給食に翻弄されながらも一生懸命、人生を謳歌していく姿を見守ってください。楽しめるか楽しめないかは自分次第なんです。人生ってこんなに素晴らしいものがたくさんあふれているということを、皆さまに感じていただきたいです」

――ところで今回の市原さんのぶっ飛んだ演技を見て、なぜか映画『極道大戦争』(市原隼人主演)を思い出しました。

「三池(崇史監督)ワールド全開でぶっ飛んだ作品ですね。三池さんは僕のことを全てを壊していく“破壊王”と呼んでいました(笑)。今回も台本からぶっ壊して、やりたい放題やらせてもらっています」(市原も周りのスタッフも爆笑)

――映画を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

「この作品をご覧いただいた後に分かるかもしれませんが、もしかしたらこの先の甘利田が見られるかもしれないということだけを残しておきます(笑)。本当に皆さまのお気持ち次第ですが、僕らはいつでも続編の準備はできていますので、まずはこの『劇場版 おいしい給食 卒業』を楽しんでいただきたいです」

――最後に、市原さんご自身の部屋のこだわりを教えてください。

「分かりやすく言うと、“好きなものにあふれていたい”です(笑)。僕はバイクとカメラがとても好きなので、機材が並んでいます。今は金魚もいたりします。テーブルは天板を買ってきてサイズを測ってカットして、全部自分で作っています。全体のイメージは木で、“木”と“好きなもの”に囲まれているような部屋です。リビングには暖炉があって、ちょっと寒くなると暖炉の火を見ながら、本を読んだり、お酒を飲んだりしています(笑)」

撮影=島本絵梨佳 取材・文=金城隆

インフォメーション

劇場版 おいしい給食 卒業

全国公開中
80年代の中学校を舞台に給食マニアの教師・甘利田幸男(市原隼人)と生徒・神野ゴウ(佐藤大志)による、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描いた学園グルメコメディ。劇場版第2弾の本作では、宿敵ゴウの卒業によって、長く続いた給食バトルに終止符が打たれるまでが描かれる。

市原隼人

いちはらはやと●1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に「ウォーターボーイズ2」、「ROOKIES」など。現在、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演中の他、2022年秋公開予定の映画『レッド・シューズ』に出演する。

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